サンゴ礁

サンゴ礁ってなんだろう?

サンゴ礁は、サンゴを主体とした生物によって形成された地形。その中には、サンゴはもちろんのこと、海藻や海草が繁茂する藻場、また水深の浅いところには干潟も形成され、様々な生物がそこで生活し、育まれている。サンゴ礁の代表的な生物「サンゴ」の仲間であるハナヤサイサンゴの直径1~25cmの群体42 個のサンゴの枝の隙間から128種類もの動物が確認されている(西平ら,1995年)ことからも、サンゴ礁における生物の豊かさは容易に想像できる。サンゴ礁は、まさに生物がつくりあげた「生物の楽園」なのである。

サンゴ礁は、現在では、主として琉球列島(沖縄県と鹿児島県の奄美群島)と小笠原諸島に分布する。なお、サンゴ礁の代表的な生き物「サンゴ」は、琉球列島より北の九州や四国、本州でも認められる。

サンゴ礁の役割

サンゴ礁は、魚介類やヒトにいろいろな「恵み」を与えており、現在、注目されている。


サンゴ礁の7つの役割

  1. 多様な生物の生息・生活場
    • 約400種に及ぶサンゴの生息場
    • 魚類、貝類やエビ類、カニ類、また海藻や海草などの多様な生物の生息・生活場
  2. 魚介類を育む
    • タカサゴ(グルクン)やシャコガイなど様々な魚介類の産卵場
    • 様々な魚介類の子どもが育つ場所
  3. ヒトをやしなう
       
    • 私たちが食べる魚介類を育む
    • サンゴ礁のイノー(礁池)では、モズクやアーサー(ヒトエグサ等)などの生産場
  4. 海の環境を整える
    • サンゴ礁に生息するサンゴをはじめとする様々な生物による海底の堆積物、水中の懸濁物・有機物の除去
  5. 海岸をまもる
    • 沖からの波を弱め、海岸をまもる
    • サンゴをはじめとするサンゴ礁の生物の遺骸が、砂浜の形成に貢献
  6. 癒し・学びの場
    • ダイビングなどによるレクリエーションの場
    • 環境学習の場
  7. 環境変化のバロメーター
    • 水温変化などの海の環境変化のバロメーター

サンゴ礁の現状

サンゴ礁を代表する生き物「サンゴ」は、1998年の高水温による白化現象により国内だけでなく、世界規模で壊滅的な被害をうけた。また、国内では、「サンゴ」を食べるオニヒトデが各地で異常発生し、深刻な問題となっている。さらに、陸域からの赤土流入や船舶を海上にとどめる際の錨の投入、沿岸開発など、人為的な被害もあとを絶たない。その他にも、最近、サンゴの病気や寄生虫による問題もでてきている。

クライブ・ウィルキンソンが編集した「世界のサンゴ礁の状況」によると、2004年に、世界のサンゴ礁の20%が消失し、回復できそうにないと報告された。さらに、24%は危険な状態で、10~20年後には消失してしまうといわれており、「生物の楽園」は危機的状況にあるのです。

サンゴ礁とヒトとの共生

サンゴ礁は、海と陸地との境界に位置し、古くから島の人々の貴重な食料供給の場として利用されてきた。また、ヒトが海と身近に触れあえる場として利用されてきた。そして、生き物の楽園であるサンゴ礁は、魚介類を育むだけでなく、海の環境を整えるなど、私たちに様々な恩恵を与えてきた。

こうした長い歴史の中で、サンゴ礁は現在も利用され続けている。しかし、現在、危機的状況にもある。そうした中、サンゴ礁で育まれる魚介類を通して生計をたてる漁師たちの間で、サンゴ礁、またサンゴ礁を代表する生き物「サンゴ」をまもる活動が、現在、広がっている。また、市民グループや地域住民、ダイビングショップや一般のダイバーによる活動が広がっている。

サンゴ植え付けの様子

オニヒトデ除去の様子

サンゴ礁を再生し、豊かな海を次の世代につなごう

サンゴ礁は、私たちが生活する空間のすぐそばにある。そのため、私たちの生活による影響を川などを通じて強く受ける。海水浴やレジャーを通して行くことはあっても、普段は身近に感じないサンゴ礁・・・しかし、食などを通じて意外に日常的に触れている。まずは、地元の水産物を扱っているお店を訪れ、自分の町のサンゴ礁の生き物を探してみよう!興味をもったら、海に行ってサンゴ礁をみてみよう!そして、自分ができることを探してみよう!何もできなくても、自分の地元の浜であがる魚や貝を食べ、地元の海のファンになろう!

(主な参考書)
環境・生態系保全活動の手引き(水産庁,2009)
「日本のサンゴ礁(環境省・日本サンゴ礁学会編)」(自然環境研究センター,2004)
「足場の生態学(西平守孝)」(平凡社,1996)
「サンゴ礁-生物がつくった生物の楽園(西平守孝ら)」(平凡社,1995)
「Status of Coral Reefs of the World:2004(Clive Wilkinson編)」(GCRMN,2004)